バイオテクノロジーを応用した商品としての抗体医薬品は、新薬の開発段階で、また臨床試験の段階で、そして投与する治療薬の段階で、圧倒的なシェアを持っています。この抗体医薬品の需要に対して、不純物の除去、製造歩留まりの向上、高純度の追及、コストの削減、厳しい監督官庁の要求など、精製工程を設計する担当者に多くのプレッシャーを与えています。従来から研究員及び製造担当者は、プロテインAを抗体精製の主要手段として採用してきましたが、プロテインAリガンドの漏れ、抗体の失活、過酷な製造工程下での不安定性、動物由来の問題、高いコストなど、プロテインAが抱えるこれらの問題点から、適切な代替品が必要となりました。
今回紹介しますマブゾーベントは、プロテインAに取って代わる、画期的な合成リガンド・アフィ二ティ・クロマトグラフィ樹脂です。マブゾーベントは抗体の吸着量、精製効率、高純度を保ちながら、過酷な環境下でも数百回の使用が可能なことから、従来の精製方法より格段に安いランニングコストとなります。

プロメティック・バイオサイエンス(ProMetic Biosciences)社は、1987年よりバイオテクノロジー業界におけるアフィ二ティ・クロマトグラフィ樹脂のパイオニアとして、ラボスケールの研究開発での使用及び、製造用大量精製方法としての開発をしてきました。プロメティックが特許を収得した「擬似リガンド(ミメティック・リガンド: Mimetic Ligand)」テクノロジーは、目的とするタンパク質などの生体高分子に結合する、天然のアフィ二ティ分子を合成的にまねる技術です。このことから総ての生体高分子に対する吸着量と生産量が、至適化されます。その生体高分子精製において結果を出す鍵は、広範囲でのコンビナトリアル・ケミストリー技術による、合成リガンドのライブラリー構築です。長年の研究開発によって、計画的に無数のリガンド・アレイをスクリーニングし、新しいリガンドの構造をコンピューターでデザインしています。
品質と技術革新を両立させるために、ISO9001:2000スタンダードの堅持、もしくはそれを卓越するように努力しています。そのために顧客と緊密に接し、彼らのユニークな要求に応えてきました。このことによって、バイオ医薬品業界における要求を満たす革新的な解決法が、提供できるように能力を高めました。
そして製薬会社及びバイオ医薬品会社と共同で、バイオセパレーション/精製プロセスの開発を行なってきました。特許収得済みの分離技術と展開的なコンビナトリアル・ケミストリー技術による合成リガンドのライブラリーは、製造効率の向上、製造コストの削減、そして製品の純度と歩留まりの継続的な改善による、顧客の市場における優位性に貢献します。
マブゾーベント合成リガンド・アフィ二ティ・クロマトグラフィ樹脂は、抗体精製におけるバリデーションが済んでいます。従来の伝統的なプロテインAを使用したプロセスの効率向上を図るために、多次元的なトリアジン誘導体ライブラリーからコンビナトリアル・ケミストリー技術で、完全な合成擬似(ミメティック)リガンドを、スクリーニングしています。

マブゾーベント合成リガンド・アフィ二ティ・クロマトグラフィ樹脂は、遺伝子組み換え及び天然のプロテインAを模擬しています。しかしマブゾーベントが、IgG総てのサブクラスに結合する点で大きく違います。そしてプロテインAと比較して、異なる種のIgGにも結合します(表1.参照)。
マブゾーベントはプロテインAが持つ、疎水的コア構造にある132番のフェニルアラニンと133番のチロシンのジペプチドによる結合部位を、模擬するように開発されました。トリアジン構造をスカッフォードに、芳香族アミンで置換しながら、IgG結合リガンド・ライブラリーを構築しました。その結果できた合成バイ・ファンクショナル・リガンドはヒトIgGに対する高い結合性を持ちます。このことからマブゾーベントA1PとA2Pは、卓越した精製パフォーマンスが提供できます。プロテインAとのユニークな違いを追及すればするほど、抗体を分離する理論的な第一選択肢として、マブゾーベントが選ばれます。
マブゾーベント合成アフィ二ティ・リガンドは、タンパク質リガンドやペプチド・リガンドと比較して、多くの特長があります。例えば原料のトレーサビリティー問題を、心配する必要がありません。動物由来の物質が無く、また宿主のタンパク質、DNAなどの細胞由来の不純物も無く、細胞培養用培地/醗酵組成物質も無く、汚染物質になる可能性を最小限にしています。このことはもちろん、プロセス・バリデーションのコストを下げます。もう一つの鍵となる大きな違いの特長は、1M NaOHで容易に殺菌できるマブゾーベントの頑強性です。マブゾーベントはエチレングリコールなど、他の一般的な溶出溶媒などにも耐久性があります。これら多くの特長をもつマブゾーベントですが、プロテインAなどのタンパク質をリガンドとしたアフィ二ティ・クロマトグラフィ樹脂より安価です。
マブゾーベントは効果的に広範囲のヒト及び哺乳類ポリクローナル抗体(ウシ、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギなどを含む)、総てのモノクローナル抗体、ヒト型キメラ抗体、抗体フラグメントに結合します。マブゾーベントA2Pは通常ヒト及びヒト型抗体の精製にお勧めします。またマブゾーベントA1Pは、齧歯類(murine)の抗体精製に最適です。沈殿したマブゾーベントの静的吸着量は、プロテインAと比較しますと、通常50mg高純度ヒトIgG/mLあります。もちろん静的/動的吸着量は、抗体のタイプ及び原料体などの性質によって異なります。この点でマブゾーベントの柔軟性が活かされます。フェノールレッドやプルロニック®(Pluronic®)などの難しい細胞培養用添加物が存在する場合、抗体の培養液の簡単な前処理を施す事によって、吸着量が改善されます。また希釈されたサンプル溶液は濃縮が施されますと、吸着量が改善されます。
マブゾーベント合成リガンド・アフィ二ティ樹脂は、架橋されたアガロース樹脂ピュラビーズ(PuraBead)の粒径分布が厳しくコントロールされていますので、高流速が得られます。独自の架橋技術及びリガンドの導入工程は、樹脂の吸着量を維持しながら、その線速を最大限に引き出しました。
マブゾーベントA1P/マブゾーベントA2Pは、血清、血漿、腹水、細胞培養の上清などの異なる原料体やトランスジェニック動物などからのIgGと結合します。マブゾーベントは個々の原料体が持つ特性や、製造工程で要求される項目に沿って、ワンステップで済むダイレクト・キャプチャー及び、マルチステップの一部分として使用することができます。マブゾーベントのモノクローナル抗体の分離精製では、相対的な塩濃度にかかわらず、pH6〜8で吸着させることができます。その際の溶出は通常pH2〜4で行なわれますが、中性pH付近で溶出する方法も可能です。
ヒト ポリクローナル抗体に対するマブゾーベントのアフィ二ティ結合解離定数(binding affinity dissociation constant)は10-9Mで、最大吸着量(Qm)は精製済みタンパク質で約70mg/mLとなります。
表1. 種の違いによるIgGのマブゾーベントA1P/マブゾーベントA2P 結合性
| 動物種/サブクラス(原料体) | マブゾーベントA1P | マブゾーベントA2P |
| ヒトIgG(血漿) | +++ | ++++ |
| マウス(腹水) | ++++ | ++++ |
| ニワトリ(血清) | + | + |
| ヤギ(乳漿) | + | ++++ |
| ブタ(血清) | +++ | nd* |
| ウサギ(血清) | + | ++ |
| ヒツジ(血清) | ++++ | ++++ |
| 齧歯類IgG1(モノクローナル)** | + | + |
| ヒトIgG1 | nd | ++++ |
| ヒトIgG2 | nd | ++++ |
| ヒトIgG3 | nd | ++++ |
| ヒトIgG4 | nd | ++++ |
*nd(not determined): 不検出
**プルロニックF68[哺乳動物細胞培養に添加される細胞保護剤(cytoprotective agent)]が含有されてる細胞培養上清からは、その影響によりモノクローナル抗体に対する吸着量が著しく損なわれます。一方このプルロニックF68の除去は、その吸着量を向上させます。細胞培養上清からモノクローナル抗体を精製する際に、この含有されているプルロニックF68を除去する方法が、記載されたアプリケーション・ノートを用意しておりますので、ご希望の方は弊社までお問い合わせ下さい。